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◆チェスターストーリー 第8話  ★世界で一番大切な人☆ 制作者 なをき

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「みんな!大丈夫か?」
 チェスターたちが魔族を倒して少したってから、クレスたちが到着した。
 ロバートも一緒のようだ。
「残念だが、もう終わったぜ」
 クレスに向かって、ガッツポーズを決めるチェスター。
 すでに、エルヴンボウと矢は回収したようだった。
「そうか・・・」
「ま!あたしたちにかかればこんな奴ら、ちょちょいのちょいって感じ?」
 アーチェは、クレスたちに向かってにっこり微笑んだ。
「エリスさんは?」
 クレスはあたりを見回した。
「あ・・あそこに・・・」
 ミントが指さした方・・・祭壇の付近にエリスはいた。
 エリスは、祭壇から落ちた少女たちの無事を確認していたのだ。
「本当に大丈夫?ミーナちゃん、サリアちゃん」
「うん、何ともないよ、ちょっとアザができちゃったけど・・・」
「ありがとう!エリスお姉ちゃん」
「本当に良かった・・・」
 エリスは、少女たちを優しく抱きしめた。
「えへ・・・くすぐったいよ・・・エリスお姉ちゃん」
「さぁ、一緒に帰りましょう」
 エリスは、少女たちの手を握ってあげた。
「うん!」
 少女たちは元気良く返事をした。
「大丈夫だったか?」
 チェスターはエリスに問いかけた。
「はい、これもみんなチェスターさんのおかげです・・・本当に・・・・ありがとうございました」
 エリスは、チェスターの顔を今まで以上に優しい笑顔で見つめ、チェスターの手を握りしめた。
「いや・・・そんな・・・」
 チェスターは、思わす赤面してしまった。
「ちょっとちょっと、あたしもいるんですけど〜」
 チェスターとエリスの会話に間に割って入ったのは、アーチェだった。
「え・・?あ・・そうでしたね。ありがとうございました」
 エリスはチェスターの手を離し、アーチェにお礼を言った。
 ところがアーチェは顔を膨らせてエリスに突っかかった。
「ねぇ、あんたさ・・・そんなにさ・・馴れ馴れしくしないでくんない?」
「え・・?」
 エリスは突然そんなことを言われ、呆然としてしまった。
「やめろよ、アーチェ!」
 チェスターがアーチェを叱った。
「ふん!なにさ!」
 アーチェはふてくされた様子で答えた。
「チェスターさん、この方はもしかして・・・その・・・」
 ”チェスターさんの恋人ですか?”と、聞こうとしたが、エリスは口ごもった。その答えを聞くのが、怖かったからだ。
「ああ・・・こいつらは俺の仲間なんだ」
 チェスターは、アーチェだけではなくクレスたちも含めて紹介した。
 そのことで、エリスは少しほっとした。
「はじめまして、みなさん、あたしはエリスと申します」
「はじめまして、エリスさん」
 彼らは、おのおの挨拶を交わした。
 だが、アーチェはふてくされたままだ。
「それで・・・ジャガーはどこに・・・?」
 ロバートが口を挟んだ。ジャガーがここにいることは、すでに情報を得て知っているいるようだ。
「あれ・・・?」
 チェスターは、ジャガーを探しに祭壇へ近寄ろうとした。そのとき・・・
 ゴウン!
 雷が落ちるような音とともに、チェスターが倒れた。
 足から血が流れている。
「ぐはぁ・・・」
「チェスターさん!」
「チェスター!」
「チェスター殿!」
 仲間たちがチェスターの名を叫ぶ。
「ジャガー!」
 ロバートは、祭壇の裏に隠れていたジャガーに向かって叫んだ。
 ジャガーは、小さくて長い筒のような物を持ってこちらに向けていた。
 どうやら筒の中で爆発を起こし、その衝撃で飛び道具を発射するという、魔科学が生んだ武器の一つだ。
「はぁはぁ・・・よくも邪魔してくれたな!貴様も道連れだ!」
「チェスターさん!」
 最初に動いたのはエリスだった。
 彼女は、身を挺してチェスターを守ろうとした。
 すかさずクレスが、空間翔転移でジャガーを阻止しようとするが、間に合わなかった。
 ゴウン!
 2回目の砲撃がなされた。
「うっ・・・」
 それと同時に、エリスの体がチェスターの前に倒れた。
「エリス!」
 チェスターは、スローモーションのように倒れるエリスを抱きかかえた。
 ジャガーの真上に現れたクレスは、ジャガーを斬りつけた。
「やあっ!」
「がはっ・・・」
 クレスの剣によりジャガーは息絶えた。
「エリス!」
「エリスお姉ちゃん!」
「チェスターさん・・・・よかった・・・無事だったのですね・・・」
 エリスはチェスターの腕の中で、消え入りそうな声で喋った。
 彼女の腹部からは、多量の血液が流れ出ている。
「ミント頼む!」
 チェスターは悲痛な声を上げる。
「はい!」
 ミントはユニコーンホーンを掲げ、法術の詠唱を始めた。
「リザレクション!」
 暖かい光を受け、チェスターの傷は完全に癒えた。
 だがエリスの傷はあまりに深く、負傷箇所を塞いでも生命力は衰えるばかりだった。
「チェスターさん・・・あたし・・・」
「もうしゃべるな!」
 エリスを制止させようとするチェスター。だがエリスは話し続けた。
「お願いです・・・聞いてください・・・あたしは・・・あたしはチェスターさんが・・・好きです・・」
「え・・・?」
 チェスターは、エリスの言葉の意味わからず、一瞬呆然としてしまう。
「愛しています・・・チェスターさん」
 エリスは、目に涙を浮かべて、チェスターに想いを告げた。
「うそ・・・」
 アーチェは、呆然とした様子で、彼らを見守っていた。
「最後にチェスターさんの・・・お役に立ててあたし・・・幸せです・・・」
「なに言ってるんだよ!しっかりしてくれよ!」
 チェスターは、エリスを優しく抱きかかえ、声をかけた。
「リザレクション!」
 ミントは、再び法術を唱えるが、さして効果はないようだ。
 エリスの顔からは、徐々にその赤みが失われてゆく。まるで、生命の火が消えかかっているように・・・
「アーチェさん・・・」
「え・・・?」
 アーチェは、突然声をかけられて、思わず動揺してしまった。
「アーチェさんも・・・あたしと・・・同じなんですね・・・」
「・・・」
「あたし・・・わかります・・・」
「・・・」
 アーチェは、エリスの問いに答えられないでいた。
「アーチェさんの大切な人・・・あたしと・・・同じなんですね・・・」
「・・・うん」
 アーチェは、こくりとうなずいて言った。
「あたしだって・・・チェスターのこと・・・好きだもん・・・世界で一番好きだもん!」
 アーチェは、自分の心の内に秘めた想いをうち明ける。
「どうか・・・チェスター・・・さんを・・・おねがい・・・します・・・」
「・・・」
 そう言って、エリスは目を閉じた。
「頼む!目を開けてくれ!」
 しかし、エリスは目を開こうとはしない。
「ひっく・・・エリスお姉ちゃん・・・死んじゃいやだよ・・・」
 少女たちも、悲しそうに呟いた。
「嘘だろ・・・そんな・・・」
 チェスターは、エリスの手を優しく握りしめ、呟いた。
 チェスターの脳裏に、いつも見る悪夢が蘇る。
(俺は・・・また救うことができないのか・・・ちくしょう!)
 ミントが、3度目のリザレクションを使おうとしたとき、ミントの心に直接話しかける者がいた。
(ミントさん・・・私の力を解き放ってください・・・)
「え!?誰?」
(私はユニコーンです。私の力を使ってもう一度回復させてください。)
「でも・・・」
 ミントは思わず口ごもる。力を解き放つ・・・それはユニコーンの消滅を意味していたからだ。
(時間がありません。さあ・・早く・・・)
「・・・わかりました。ユニコーンさん・・・・」
 ミントは意を決して答えた。
「え!?ユニコーンだって!?」
 チェスターは、ミントに問いかける。
「はい、今からユニコーンの力を借りて再度治療を試みます。」
 ミントは三度ユニコーンホーンを掲げ、法術の詠唱を始めた。
「リザレクション!」
 ミントが法術を唱えると、ユニコーンホーンは音もなく崩れ去った。
「・・・う・・・ん・・・」
 エリスはそうつぶやいた。
 すると、エリスの顔色は赤みを取り戻し、生命力が回復してゆくのがうかがえた。
「エリス!」
「・・・」
 しかし、エリスはチェスターの問いには答えない。どうやら、ぐっすり眠ってしまっているようだ。
 規則正しく呼吸をするエリスは、チェスターの腕の中で幸せそうに眠っていた。
「よかった・・・」
 チェスターは、安堵のため息をはいた。
「ああ・・・一時はどうなるかと思ったよ」
 クレスも安心したように呟いた。
「ミント・・・」
 クレスはミントに声をかけた。
「ユニコーンさんには、助けられてばかりですね・・・」
「・・・うん・・・そうだね・・・」
(心配するな・・・私は死んだ訳ではない)
 今度は、そこにいる全員の頭にユニコーンの声が響く。
「え!?」
(私の魂はこの娘の心の中にある・・・)
「エリスさんの?」
(そうです・・・ですが・・・もうあなたの所に戻ることはできません・・・これでお別れです・・・ミントさん)
 ユニコーンは、ミントに話すときだけ、なぜか口調が丁寧になる。
「ユニコーンさん・・・今までありがとうございました・・・」
 ミントは、ユニコーンに対して礼を言った。
(いえ・・・私の方こそ楽しかったです)
「はい・・・」
(まぁ・・・あなたにはクレス殿がいるから、私との別れは遅かれ早かれ、やってきたでしょうが・・・)
「えっ!」
「そんな・・・」
 その言葉に、クレスとミントは、思わず赤面してしまう。
 身も心も汚れなき乙女のみ、ユニコーンの主となることができる。しかし、その資格を失ったとき、ユニコーンはその女性の元を去るのだ。
(ではそろそろ本当にお別れです・・・)
「はい・・・さようなら・・・」
 彼らは、おのおのユニコーンに別れの言葉をかけた。
「じゃあ・・・そろそろユークリッドに戻ろうか・・・」
「ええ・・・そうですね・・・」
 クレスたちはそう言って、荷物を持って洞窟を出ようとした。
 ところが、突然地鳴りが響きわたった。
「な・・・なんだ!」
「どうしたと言うのだ!」
 クレスとロバートは、突然のことに驚いて声をだした。
 地鳴りとともに空間が裂け、魔界の瘴気が洞窟内に充満した。
「まさか・・・」
 ロバートがそう呟くと、彼の傍らにオリジンが出現した。
「どうやらエリス殿が傷ついたことにより、不完全ながらも魔王復活の儀式が成立したようだ・・・」
 オリジンは落ち着いた口調で、クレスたちに話しかけた。
「なんだって!」
 張り裂けた空間から、腐った肉の固まりが出現した。魔物の腐乱した死骸を連想させるその物体は、ゆっくりと起きあがった。
 皮を剥ぎ取られたような風貌が、儀式の不完全さを物語っていた。
 瘴気はおぞましい臭気と共に、その魔物の体から発せられていた。
「魔王ベルセルク・・・」
 オリジンは、魔物を睨みながらそう呟いた。



                                             続く


あとがき
 次回も戦闘がメインのお話です。(またか・・・)
 まぁ、クレスたちも活躍しますのでどうかご容赦ぐださい。
 もしよろしければ、ぜひ感想をお聞かせください。

                


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