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  ◆チェスターストーリー 最終話  ★永遠の愛を貴方に・・・☆    制作者 なをき

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  戦いが終わった後、彼らはそれぞれユークリッドの都に向けて進んでいた。
 ロバートは、あらかじめ用意していた馬車に子供たちを乗せ、一足先に出発した。
 クレスはミントを後ろに乗せて、馬を歩かせていた。
 その後ろからは、箒に乗ったアーチェと、眠ったままのエリスを背負ったチェスターがついてきた。
 眠ったままでは馬に乗るのは危険なので、チェスターが背負っているのだ。
「なあ・・・クレス」
「ん・・・?なんだい?」
 友の呼びかけに答えるクレス。
「お前たちは先に行ってていいぞ」
「でも・・・」
「俺は大丈夫だから。ミントだって疲れてるだろうし・・・」
 普段から鍛えているクレスにとっては、激しい戦いの後の徹夜も、さほど苦労にはならない。
 だがミントは、そういうわけにはいかない。
 先ほどの戦いで、すでに精神力は限界だろう。
「そうか・・・わかった、すまないな」
「チェスターさん、すいません」
 クレスとミントは礼を言う。
「いいってことよ、さあ・・・」
「ああ・・・チェスターも気を付けてな・・・」
「ああ!」
 そう言うとクレスは馬を走らせた。
 徐々に遠ざかり、やがてチェスターたちの視界から姿を消した。
「・・・」
「・・・」
 それからチェスターは黙々と歩き続けた。
 チェスターの前を飛んでいるアーチェは、チェスターに背を向けたままだ。
 彼女も口を開こうとはしなかった。
 辺りは虫の声も聞こえない。
 完全な夜の静寂が支配していた。
 南ユークリッド大陸とを結ぶ橋にさしかかったとき、アーチェが口を開いた。
「ねぇ・・・チェスター・・・」
「ん・・?なんだ?」
「あのさ・・・ごめんね・・・」
「え・・・?」
 アーチェが何のことを言っているのかチェスターはわからなかった。
「あたしさ・・・ここに来るときさ・・・あんなこと言っちゃってさ・・・」
「ああ・・・あのことか・・・」
 チェスターが、ローンバレイに向かっているときのことを言っているのだ。
「あたし・・・どうかしてたよね・・・」
「・・・いや・・・俺も怒鳴ったりして悪かったよ」
「本当にごめんね・・・」
「別に気にしてねーよ。来てくれたじゃねーか・・・」
「うん・・・ありがとう・・・」
 辺りを照らす明るさと言えば、星々のかすかな光だけだ。
 チェスターの位置からでは、アーチェの表情を伺い知ることはできない。
 それからまた沈黙が訪れる。
 チェスターの足音だけが、静寂を破る唯一の音だ。
「口惜しかったんだ・・・あたし・・・」
「え・・・?」
「いきなり現れたその娘にさ・・・あんたを取られるんじゃないかって・・・」
「・・・何言ってんだよ・・・エリスは・・・」
「知ってるよ・・・・」
 アーチェの声はチェスターの言葉をさえぎった。
「妹に似ているから・・・なんでしょ?」
「なんだ・・・知ってたのか・・・」
「うん・・・ミントとクレスが話してたの・・・聞いちゃった・・・」
「そうか・・・」
「・・・」
「・・・」
「ねえ・・・今でもそうなの・・・・」
「え・・?」
「今でも妹に似ているから優しくしてるの・・・?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
 チェスターは、アーチェのこの問いには答えることができなかった。
 エリスの気持ちを知ってしまったあの瞬間からチェスターは、エリスを妹以外の存在として見ていた。
 確かに妹によく似ているが彼女は妹ではないのだ。
 彼女はアミィではなくエリスである。
 つまりエリスはチェスターにとってすでに一人の女性なのだ。
「俺・・・」
「あたしね・・・あんたのこと・・・ずっと・・・待ってたんだ・・・」
 再びチェスターの言葉をさえぎりアーチェがしゃべる。
「100年間・・・あんたのことだけを考えて・・・ずっと・・・我慢してきたんだ・・・」
「・・・」
「100年前あんたと別れたときからずっと・・・ずっと・・・」
「アーチェ・・・」
 チェスターは戦いが終わってアーチェと再会したときのことを思い出した。
 2年も前のことなのに今でも鮮明に記憶に残っている。
(あのときアーチェは真っ先に俺に会いに来てくれたんだよな・・・)
 村の復興が始まってからすぐアーチェはみんなの所へ来てくれた。
 最初にチェスターの所へやって来たのだ。
「えへへ・・・また会えたね・・・」
 単純な一言だったがアーチェはこの言葉を言うのをどれほど長く待ったのだろうか・・・
 そんな疑問がチェスターの脳裏をかすめる。
 100年と単純に言ってもそれは人には長すぎる時間なのかもしれない。
「あたし・・・かなわないよね・・・」
「え・・・?」
「その娘にはさ・・・エリスにはかなわないよね・・・あたし・・・」
「・・・」
「ねえ・・・チェスター・・・」
「なんだよ・・・」
「あたしのことはさ・・・気にしなくていいよ・・・」
「え・・・?」
「あたしってさ・・・長生きじゃん?きっとチェスターがダメでもさ・・・いつかすてきな人が現れるよ・・・」
「・・・」
「だからさ・・・あたしの事は・・・気にしないで・・・」
 アーチェは消え入りそうな声で呟いた。少し涙声だ。
「・・・」
 チェスターは何も答えることができなかった。
 うわべだけの言葉など、なんの意味も持たない。
「じゃーね・・・」
 しばらくの沈黙のあとアーチェはチェスターの沈黙を確認したのち、箒を加速させて飛んでいった。
 もしかしたら、その少しの時間を置いた理由はチェスターが呼び止めてくれるのを心のどこかで願っていたからなのかもしれない。
(俺には・・・アーチェを呼び止める資格なんて無い・・・)
 やがてアーチェの姿は、完全に夜空の闇に消えた。
 結局この間アーチェは、チェスターに顔を向けることはなかった。
 アーチェがいなくなった後、再び静寂があたりを支配した。
 チェスターは、この静寂が今まで味わったことのないくらいの静けさに感じた。
 あるいはそれは、チェスターの心を写していたのかもしれなかった。
「チェスターさん・・・」
 突然後ろのエリスが声をかけた。
「起きてたのか・・・」
「ごめんなさい・・・あたし・・・話を聞いてしまいました」
「別にいいさ・・・」
「チェスターさん・・・」
「ん?」
「チェスターさんも・・・アーチェさんのこと・・・好きなんですね・・・」
「・・・」
 そう言うとエリスはチェスターの体をギュッと強く抱きしめた。
 本人は意識していないのだろうが、思わず力が入ったのだろう。
 チェスターもそれに気がついていたのだが、何も言わなかった。
 チェスターの背中に、エリスの暖かい体温が伝わってくる。
 まるで、背中にエリスの鼓動が聞こえて来るみたいだ。
「俺は・・・」
「いいんです・・・何も言わないでください・・・」
 エリスはチェスターの言葉をさえぎった。
 その質問に答えることが、チェスターをどれだけ苦しめるか彼女は理解していた。
「いや・・・言わせてくれ・・・俺もアーチェが好きなんだ・・・初めて会ったときからずっと・・・」
 その言葉はチェスターにとって、一つのけじめだった。
 男として答えをはぐらかすわけにはいかないと、彼は思ったのだ。
「でもエリス・・・君のことだって・・・俺は・・・俺は・・・」
 これがチェスターにできる最大限の答えだった。
 決して同情で言ったわけではなかった。
「はい・・・いいんです・・・もう・・・なにも言わないで・・・」
 エリスはそう言ってゆっくりとチェスターの後ろ髪に頬をよせ、両手でチェスターを優しく抱きしめた。
「チェスターさん・・・あたし・・・幸せです・・・」
「・・・」
 その一言でチェスターの心の苦しみは解き放たれた。
「こうしているだけで・・・あたし・・・幸せです・・・」
「そうか・・・」
 チェスターはそう答えるのがやっとだった。
「もう少し・・・寝ててもいいんだぞ・・・」
「いいえ・・・」
「そうか・・・」
「お願い・・・今だけは・・・」
(今だけはあたしだけのチェスターさんでいて・・・)
「ああ・・・」
 チェスターはエリスが言おうとしたことを理解していた。
 チェスターはエリスの両手を優しく握りしめた。
「チェスターさん・・・」
  エリスもまたチェスターの手を優しく握り返した。
(チェスターさん・・・あたしは・・・あなたのことを・・・生涯忘れたりしません・・・誰よりも・・・愛しています・・・)
 エリスは、やがては訪れるであろう別れを予感していた。
 だが、エリスは少しでも長くこうしていたいと、心から願った。
 チェスターの心もまたそれと同じであった。
 いつしかチェスターの歩みは止まっていた。
 彼らは満点の星空の下で、いつまでも互いの温もりを感じ合っていた。
 空に浮かぶ星々の光が、優しく彼らを包み込む。
 天空に輝く二つの月は雲に隠れることなく、いつまでもその美しい姿を現していた。



                                         完
 


あとがき
 これにて私のティルズオリジナル長編小説チェスターストーリーは完結です。
 飽きっぽい私がここまで来れたのもみなさんの声援があってのことです。
 最後まで愛読してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
 いかがだったでしょうか?私の初小説は?
 みなさんを満足させられたかどうかわかりませんが、私なりに精一杯がんばったつもりです。
 チェスターが主人公の物語はこれでおしまいです。
 これからもティルズの小説を制作していきたいと思います。
 機会があればそちらもご覧ください。
 また、ぜひ感想をお聞かせください。
 お待ちしています。

 

        


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