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◆スターダストメモリー 第5話 ★告白☆ 制作者 なをき
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無限の広さを持つのではないかと、思わせるほどの銀色の雪原のアーリィ大陸。
その南に連なる広大な山々は、未だ多くの謎を秘めた領域だった。
大地に張り巡らされた絶壁。
万年、吹雪に覆われ、決して足を踏み込むことができない頂上。
いつ、誰が作ったのかもわからない、古代の闇の神を奉った神殿など。
まさにそこは、未知の領域だった。
だが、その地に踏み込もうとする青年がいた。
彼の名はクラース。友と交わした誓いを胸に、彼はこの地を目指した。
「はあぁ〜暇ね〜」
そう、ぼやいたアーチェはベットに横たわり、部屋に備えてある書籍を読んでいる。
クラースと道案内の少女を見送った彼らは、宿の一室ですることもなく時間を持て余していた。
「クラース君たちの登山は、順調にいっているのだろうか・・・?」
アーチェの父、バートは何かの作業をしながらつぶやく。
どうやら、この地で購入した珍しい薬草を仕分けしている。
彼は薬剤師を生業としている。
「まあ、大丈夫でしょ?なんたってクラースの召還術はあたしの魔術に劣らないくらいすごいんだから」
まあ、あたしの魔術の方が数段上だけどね、と心の中で付け加えながらアーチェはバートに答える。
「ね?ミラルドさんもそう思うよね?」
「・・・」
だがミラルドは上の空で窓の外の山を眺めている。
「ミラルドさん?」
「え?ああ・・・うん、そうだねクラースは大丈夫よ」
ようやく気が付いたといった感じで、ミラルドがアーチェに振り返る。
「どうしたの、なんか元気ないみたいじゃん?」
「ううん・・・なんでもないのよ。ごめんねアーチェさん」
「もしかして、あのカリンって女の子が気になるとか?」
「え?」
アーチェのその言葉に小さく息を呑むミラルド。
「え?もしかしてマジ?」
「えっと・・・そんなことないけど・・・」
「って、やーね、冗談よ」
「あ・・・そうよね」
「あはは〜」
「ふふっ」
「まったく・・・どこで育て方を間違えたのやら・・・」
女性たちの、会話を横目で見ながら、バートが苦渋の表情でつぶやいた。
笑って答えた物の、本当はミラルドはクラースとカリンの事を考えていた。
そう、彼女は知っていたのだ。クラースがカリンと出会ったのが今回が初めてではない事を。クラースがカリンの事を忘れてしまっていることを・・・
そして彼女の存在が自分の心に影を落とすほど、重大なものであることを。
「ねえ、クラースちゃん大丈夫?疲れてない?」
山道を数刻ほど登ったところでカリンが話しかける。
「ん?ああ・・・私は全然大丈夫だ。それより君の方こそ大丈夫かい?」
とは、言ったものの、実はクラースはかなり疲労困憊状態だった。
だが大人のメンツにかけて、だらしないところを見せたくはない。
「うん、私は・・・」
そう言いかけて、カリンは一呼吸の沈黙の後。
「え〜と、ちょっと疲れちゃったかも・・・もう少し行った所に大きな切り株があるの。そこで少し休んでもいい?」
「ああ、構わないよ」
クラースは心底ほっとした様子でカリンに答える。
だが、クラースは心の中で理解していた。
本当は、彼女が疲れているのではなく、自分を気遣ってそう言ってくれたことを。
(ん?そう言えば・・・)
クラースは、はっと気が付いた事があった。
カリンの足跡がほとんど雪を沈めていないことを。
まるで雪の上を歩いているような感じだった。
(カリンちゃん・・・君は一体・・・?)
クラースは薄々感づいていた。
カリンがただの人間ではないことに。
そして必要以上に彼女に心を開いている自分自身に・・・
「じゃあ、ここで少し休みましょう」
「ああ」
カリンが言った通り、少し太めの切り株が木々の合間にある。注意しなければ見落としてしまうだろう。
そこは、大人3人が腰を下ろせるくらいの広さがある。
クラースはそこに座り、休憩を始める。
カリンも、クラースの横に両手で膝を抱えるように座った。
雲一つない晴天の山間に、麓の村がはっきりと見えた。
海に面した小さな村、そこで自分を待っている仲間たち。
クラースは、彼らの事を想いながら村を眺めた。
そしてふと視線を戻し、自分の横に座っている小さな少女を横目で見た。
アーリィ大陸へ来る船の上で初めて彼女に会ってから、まだ知らないことが多すぎる。
なぜ彼女は自分のために、こんな苦労をしてくれているのか?
そして知りたいと思った。それは好奇心だけではなく、知らなくてはならないと思ったからだった。
長い沈黙、そして最初に言葉を発したのはクラースだった。
「カリンちゃん・・・」
「なあに?クラースちゃん」
「君はいったい何者なんだ?」
「・・・」
「・・・」
しばしの沈黙の後。
「それは・・・秘密よ・・・」
いつもの、カリンの言葉。だが、いつものようないたずらっ子のような無邪気な表情は無い。
「そうか・・・まあ話したくなければそれでも・・・」
「ううん、嘘!」
クラースの言葉を遮ってカリンが力強く答える。
「え・・・!?」
「やだよ・・・クラースちゃんが・・・私の事を・・・知らないなんて・・・やだよ・・・」
小さな瞳に涙をいっぱいに浮かべ、嗚咽を漏らしカリンは膝に頭を埋め小さな声で答える。
「あ・・・すまない!もし悪いことを聞いてしまったのなら・・・」
「ちがうの!ちがうの!クラースちゃんは・・・悪くないの・・・」
泣きじゃくる少女を前に、クラースは完全に動揺し固まってしまった。
それでもクラースはカリンの頭をそっとなでてあげる。
それがクラースにできた、せめてもの慰みであり、そして優しさだった。
「クラースちゃん!」
そして何かが吹っ切れたように、カリンはクラースの胸に顔を渦くめる
何度もクラースの名を呼び、彼の胸の中で涙をながすカリン。
「好きだよ・・・クラースちゃん・・・大好き・・・」
そして何度かの嗚咽の後、カリンの口から出た言葉は、クラースへの想いを告げるものだった。
「・・・」
クラースは、動揺することなくその言葉を聞いていた。
そう、彼は気付いていた。カリンの自分に対する情に。
クラースは何も答えずカリンの柔らかな青い髪をそっと掬うように撫でた。
それが彼にできることのすべてだった。
それからしばらくして、カリンが落ち着いてからクラースはカリンに話しかけた。
「もう大丈夫かい?」
「うん・・・」
「じゃあ、教えてくれるね?」
「ううん・・・今はダメなの・・・でも、もう少ししたら・・・教えてあげる・・・」
「そうか・・・」
「ごめんね、クラースちゃん。私クラースちゃんを困らせてばっかりで・・・悪い子だね」
「そんなことはないさ」
「ありがとう、クラースちゃん」
カリンは立ち上がってクラースの方へ向き直って言った。
「じゃあ、そろそろ出発しましょう。もうすぐ着くと思うわ」
「ああ」
その頃、ミラルドたちは、昼食をとるため食堂へ集まっていた。
たわいもない会話をしていると、宿の主人が彼らに話しかけてきた。
「あれ・・・?お客さんのなかに、もう一人若い男性の方がいませんでしたか?」
「ああ、クラースなら近くの山に行ったよ」
揚げポテトを噛みながらアーチェが答える。
「なっ!なんだって!?」
アーチェの答えを聞いた主人の血相が変わる。
「あっ・・・あんたら氷の魔女のことを知っているのか!?」
「え?氷の魔女ですか?なんなのですか?それは?」
バートがそう訪ねると店主は少し冷静さを取り戻して答える。
「しっ・・・知りません!失礼します」
店主はそう言うと、逃げるように食堂を出ていった。
「ちょっと何よあれ?」
アーチェは不機嫌そうに答えた。
「そういえば・・・我々がこの村に着いたとき、村人が何かを隠していたような・・・」
「ええ・・・クラースも道案内を探している時に、そんな感じがしたと言っていました」
そしてバートはあることを思い出していた。
「氷の魔女・・・?まさか・・・」
山道から少し外れた所に、人目に付かない洞窟があった。
一見横に続いているような感じだが、真下に向かって空洞が広がっている。
落ちれば無事ではすまされないだろう。
「クラースちゃん、ここで良かったかな?」
「ああ、ここなら人目に付くこともなさそうだ」
クラースは氷の剣を鞘から抜き、それをじっと見つめる。
かつての旅で、フリーギルスの聖堂の地下の洞窟を、仲間たちと共に散策したことが思い出として蘇る。
いや、それだけではない。
彼らとの旅を、一生忘れることがないであろう思いでが彼の胸を駆けめぐる。
(いつまでもこうしているわけにはいかないな・・・)
ついにクラースは決意をし、洞窟の手前まで移動し剣を放り投げた。
キィン−キィンと金属が岩を打つような音と共に氷の剣ヴォーパルソードは深い闇へと消えていった。
(これで私と皆を結ぶものは完全になくなってしまったな・・・だが・・・これでよかったんだよな・・・クレス)
彼は今、エターナルソードを完全に本来あるべき場所に還した。
友との誓いは果たされたのだ。
「クラースちゃん・・・大丈夫?」
「え?どうしてだい?」
「だって・・・クラースちゃん、辛そうだから・・・」
「そんなことはないさ・・・ありがとう、カリンちゃん」
「うん・・・」
そうは言ったものの、辛いわけがなかった。
だが弱気にはなれない。辛いのは自分だけではないのだ。
「ねえ、クラースちゃん。これで目的は達成できたよね?約束・・・私のお願い聞いてくれる?」
「ああ、そうだったね?私にできることであれば・・・」
「あのね、目を閉じて、しゃがんで欲しいの・・・」
「ああ、ここでいいのかい?」
「うん」
クラースは言われたとおり足を折り曲げしゃがみ目を閉じた。
「そのまま目を閉じていてね」
「なにをする気だい?」
「ふふっ・・・それは秘密よ・・・」
しばらくそのままでいたクラースだが不意に背中を触られた感触が走る。
「・・・!」
いや、背中を触ったわけではない。
カリンは正面からクラースを抱擁していたのだった。
食事を終えたミラルドたちが部屋に戻って先ほどの会話の続きをしていた。
「ねえ、さっきのおじさんの話どう思う?」
まずは、アーチェが疑問を発した。
「先ほど、氷の魔女と言っていましたね?なんなのでしょう・・・」
「氷の魔女・・・ふーむ・・・」
バートが腕組みをしながら考える。そしてはっと思い出した。
「そうか!思い出した!昔ルーチェに聞いた話なのだが・・・」
ルーチェはバートの妻、つまりアーチェの実の母親だ。
彼女は純粋なエルフ族であるため、一族の掟により、隠れ里に身を置いている。
「なんでもこの世界には炎の魔女フラムベルジュと対をなす氷の魔女がいると聞いたことがある。炎の悪魔フレイアとその娘フラムベルジュは、かつて神皇オーディンにより倒され改心させられたが、氷の魔女は未だ悪さをしているといわれている。氷の魔女は一生のうちにただ一度だけ人と交わり己の分身ともいえる子を成す。氷の魔女に口づけをされた者はその魔性の力に抵抗する術はなく一生彼女の奴隷になってしまうそうだ・・・昔話だとばかり思っていたが・・・まさかこの大陸の山に・・・」
「でも、そうなると・・・どうしてこの村の人は、その事実を隠していたのでしょうか?」
「おそらく、そのようなことが口外されれば、村の信頼問題になりかねない・・・この村が発展していけるのは、海外からの来訪者を迎える港としての機能があってのものだからな・・・」
海外に限らず、もしこのような噂が飛び交ってしまえば、村に訪れるものは減り、衰退してしまう。そう考えて村人たちが、その事実を、隠していたのだろう。
「うむ・・・そうなると、クラース君が一人で山に登ったのは、まずかったかもしれんな・・・」
「でもクラースは炎の精霊を操れるからきっと・・・」
「ところでさ・・・あたしあのカリンって女の子から強い魔力を感じたの・・・エルフでもないのに、おかしいな、とは思ってたけど・・・これって、もしかして・・・」
「なに!?それは本当なのか!?だとしたら、これは、まずいかもな・・・」
バートは驚きの言葉を発する。
「そんな・・・でも・・・カリンちゃんがそんなことをするはずが・・・」
ミラルドはなんとか、言葉を発した。だが不安な様子は隠しきれない。
「とにかく!我々も急いで彼らの後を追った方が良い!」
「カリンちゃん・・・・?」
突然の事に驚いたクラースは思わず目を開けてしまう。
「だめじゃない・・・目を開けちゃだめって・・・言ったのに・・・」
そう言ったカリンの目にはいっぱいの涙をたたえている。
そしてカリンはクラースの耳元でそっとささやいた。
「クラースちゃんの思い出を・・・返してあげるね・・・さようなら・・・クラースちゃん・・・」
「え・・・!?」
そしてカリンは、クラースを強く抱きしめて、そっと唇を合わせた。
続く
あとがき
みなさん、こんにちは。
今回からは思い出モードはなしです(^^)
でも次回はついに謎の少女カリンと幼き日のクラースの真実を!
でももしかしたら、変更になって先送りになるかも・・・(マテ)
では次回もお楽しみに!